ビットコイントレジャリー企業として、どこを目指すのか──「保有するだけでなく、エコシステムに関与していく」リミックスポイント新CEO 田代氏インタビュー | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

ビットコイントレジャリー企業として、どこを目指すのか──「保有するだけでなく、エコシステムに関与していく」リミックスポイント新CEO 田代氏インタビュー

リミックスポイントは2024年9月に総額15億円の暗号資産(仮想通貨)を購入すると発表。2025年7月時点のビットコイン(BTC)保有高は1168BTC強、取得総額は171億円強にのぼる。

企業によるビットコイン購入は2020年、米マイクロストラテジー(現ストラテジー)が切り拓いた。当初は疑問視する声も少なくなかったが、今では追随する米上場企業が増えている。日本では2024年、メタプラネットの取り組みが契機となった。

リミックスポイントは当初、100億円を超える「余剰資金」での購入、保有する円の価値下落を回避する「守り」でのビットコイン購入を謳っていたが、6月には「1000BTC以上の取得を目指す」と発表し、「攻め」の姿勢に転じた。さらにSBIグループの暗号資産取引所ビットポイントジャパンの前代表取締役社長で現会長の田代卓(たしろ たかし)氏が新たに代表取締役社長CEOに就任した。

ビットコインを保有する企業が増える今、「セキュリティがより重要になる」と語った田代氏は、実は2020年頃からビットコイン保有を提唱してきたという。田代氏が率いるリミックスポイントは何を目指すのか、その戦略は?

マイニングの電力問題を解決

〈リミックスポイントのWebサイト〉──Webサイトの社長メッセージで「リミックスポイントを『次世代のトレジャリーマネジメント』企業へと進化させたい」と書いている。具体的にどのような企業を目指すのか。

田代氏:これまでの「ビットコイントレジャリー企業」は、ただビットコインを買って、持っているだけ。我々は、エネルギー事業を展開しており、ビットコインのエコシステム全体に積極的に関与することを目指している。具体的には、再生可能エネルギーや蓄電池分野と連携したマイニング支援、その後のビットコインの利活用までを展開していきたい。

ビットコインの問題点の一つとして、マイニングで大量の電力を消費することが指摘されているが、我々はその解決に寄与できると考えている。再生可能エネルギーでクリーンな電力を発電する。そして、その電力を当社の蓄電システムを使って蓄える。そうすれば、日中だけでなく、夜間もクリーン電力でのマイニングが可能になる。今後、電力問題や環境問題がより大きくなり、ビットコインのエコシステムが行き詰まるかもしれない。そうした問題を我々が解決していきたい。

──話の順序が逆になってしまったが、そもそも暗号資産(仮想通貨)との関わりはいつ頃からか。

田代氏:個人的には、2012年頃から注目していた。仕事として関わったのは、2016年12月に当時はリミックスポイントの傘下だった暗号資産取引所ビットポイントジャパンに入社したところから。マーケティングや経営企画を担当し、2022年には社長に就任した。ビットポイントジャパンがSBIグループ入りしてからは、SBIグループの暗号資産関連企業でも役員を務めている。

今回、社長就任にあたって、ビットポイントでは会長となって、第一線のマネジメントは後任に譲り、リミックスポイントのマネジメントに注力することになった。

セキュリティ、BTC調達に交換業の経験を活かす

──最近、ビットコイン購入を発表する企業が増えているが、そうした実績・経験があるからこそ、ただビットコインを保有するだけの企業とは“一線を画す”ということにつながるのか。

田代氏:そう思う。真に「ビットコイントレジャリー企業」となるためにまず最も重要なことはセキュリティ。ビットコイン購入を発表した企業が、ビットコインを大量に購入した後、ハッキングを受け、盗まれてしまうという事件が今後、発生し得ると考えている。我々は暗号資産交換業で培ったセキュリティに関する知識を生かして、まずしっかり守る。セキュリティの重要性は、事件が起こらないと、あまり注目されないかもしれないが、非常に重要なことだ。

ビットポイントジャパンでは、年間数億円をかけて体制を整えているが、それでも高いセキュリティを維持することは難しい。日々新たな攻撃者が登場している。一企業が同レベルのセキュリティを実行できるとは思えない。

またもう一つ大事なポイントは、より安価に取得すること。当たり前のことだが、大量のビットコインを効率的に素早く購入するには、一定の知識が必要になる。我々は、いかに安価に、効率的に、素早く、そしてリスクを抑えながら調達するか、その方法を知っている。

例えば、今なら1BTCを1740万円で購入するのか、1750万円で購入するのか。5万円、10万円の違いが、購入額が大きくなるほど全体に影響してくる。また、OTC(相対)取引で調達する際には、相手が提示した価格の妥当性を評価できるかどうかが重要になる。

個人的にビットコイン購入に関しては、世界レベルを目指して進めていきたいと考えている。調達規模は今以上に大きくなり、そのときには調達価格の1%、2%の違いが大きな差となる。そこに我々の強みが活かせると考えている。

積極姿勢へのシフトの背景

──今年2月に高橋氏(前社長・現CFO)にインタビューを行った際には、手元にある余剰資金でビットコインを購入するとのことだった。その後、資金調達を行ってビットコイン購入という積極姿勢に転換し、今回、新社長が就任となった。この変化の背景には何があったのか。

田代氏:企業としてのビットコイン購入は、2020年にアメリカでマイクロストラテジー(現ストラテジー)がビットコイン購入を開始した頃から提案していた。ただ、既存事業が順調に行っているなかで、ある種のリスクを取ることは難しかったのだと思う。取締役会の理解、そして株主への説明も必要になる。その意味で2024年、メタプラネットさんが国内では先陣を切ってビットコイン保有戦略を打ち出し、マーケットから高い評価を得たことは大きな転換点となった。

リミックスポイントは、いわば「守り」のためにビットコイン購入を開始した。日本円の価値が下がっているなかで、大きな金額を現金で持ち続けることは、企業価値を損なうことになると考えた。だが実はその一方で、ビットコイン購入が株価に悪影響を与えるのではないかとの懸念もあった。

しかし、ビットコイン購入で株価は上がり、投資家の皆さんから一定の評価を得ることができた。会社としてもう一歩踏み込んで、ビットコインに注力していこう、Web3に注力していこうという判断になり、今に至った。

──企業によるビットコイン保有のメリット、特にリミックスポイントのようにエネルギー事業を展開する企業が保有するメリット、相乗効果を早くから認識していたということか。

田代氏:上場企業と相性がいいと考えていた。資金を調達して購入し、価格が上がればその価値を享受できる。一方、下がったとしても購入したビットコインが減ったり、なくなったりするわけではない。リスクを抑えて取得していけばよい。

一定のリスクがあるとすれば、下落局面は数年続く可能性があり、その際は維持コストが発生することだ。仮に黒字の既存事業がなければ、企業の維持コストを払うために保有しているビットコインを売却しなければならなくなる。将来、上がることが予想されているのに切り売りするようなことになる。我々は既存事業が順調でキャッシュフローを生み出せており、購入したビットコインを100%維持できる。それも強みと認識している。

鍵管理、リスク管理のリアル

──「ビットコイントレジャリー企業」を目指すうえでは、セキュリティが重要との話だったが、現状、保有するビットコインの管理はどうしているのか。

田代氏:まだ社内体制が交換業者レベルに整っていないので、外部でカストディしている。もちろん「Not your keys, not your coins(鍵を自分で管理していなければ、保有していることにはならない)」という原則を理解しているので、将来的に自社で管理するのかどうかは考えていきたい。ただ、米国でもトレジャリー管理はカストディ企業が担っていると理解している。

──ビットコインを保有する企業が増えると、日本でもカストディビジネスが広がっていくだろうか。

田代氏:その可能性はあるだろう。今、カストディビジネスが広がっていない大きな要因は、機関投資家の不在にある。我々のような企業が増えたり、日本でもビットコインETF(上場投資信託)が承認され、ETFの発行体が増えてくると、カストディ事業者が登場してくるだろう。

私はこれまでの仕事柄、ビットコインを自社で管理している事例も見てきたが、危ないところも多かった。担当者1人で動かせてしまうケースもあった。その人が万一、倒れてしまった場合にどうするのか。かつて海外取引所では社長が旅行先で急死し、顧客資産が引き出せなくなったこともあった。

分散管理も何人に分散するのが適切か。例えば、交換業での鍵管理では、信頼でき、安定的に勤務可能な人員を複数揃える必要があるうえ、共謀しないようにローテーションするなど、かなりの人数が必要になる。

信頼できる人物がダメになるケースも想定する必要がある。ギャンブルをやっていないかどうかは慎重にチェックしている。海外では暗号資産業界関係者の子供が誘拐されて、身代金を要求される事件が起きており、想定できるリスクは排除しなければならない。

住居が戸建てかマンションという観点もある。戸建ては一般的にはリスクが高い。さらにマンションのセキュリティはどうなっているか。また、低層階よりも高層階の方が有利になる。ビットポイントでは、鍵の権限を持たせる人員は、そうしたところまでチェックしていた。

──このあたりの話は、表にはなかなか伝わっていない。

田代氏:そこまで理解しているかどうか。実際に経験しているかどうかで、全然違う。交換業者の間でも取り組みレベルの差があるだろう。ビットポイントは2019年に流出事件があったことを経験してセキュリティ強化に注力してきた。

エコシステムへの貢献

──ビットコイン・エコシステムへの貢献について、今、具体的に考えていることは。

田代氏:マイナー向けの電力供給、再生可能エネルギー発電、蓄電を考えている。マイナー向けの電力供給は、現状では日本国内は電気料金が高く、難しい。かつてはマイナー向けプランを提供する電力事業者が存在したが、今はほぼ存在しない。会社としてブームに乗るのではなく、ビットコインという産業自体を支えていくという覚悟、決意を持った電力供給事業者を目指す。

マイニング自体も考えていきたい。まだ手探りな部分はあるが、何をすればこの業界に貢献でき、我々は収益をしっかり上げることができるかを掘り下げていきたい。

──新CEOへの就任後、役員報酬をビットコインで受け取ると発表した。周囲からの反響はどのようなものだったか。

田代氏:ポジティブな反応が多く、株主の皆様から評価していただいたと考えている。 もちろん本来は会社の株式を持つことが理想だと思うし、実際に株主の皆様からそうした意見もいただいた。「会社の株式を持っていない人間が、責任を持って経営できるのか」と。ただし、現状では会社法上の問題やインサイダー規制などがあり、簡単には取得できない。そこで株価と連動する動きをしているビットコインを役員報酬として受け取ることにした。今後、機会があれば、株式を取得していきたいと考えている。

日本でトップ、世界でトップを目指す

──今後、リミックスポイントをどういう会社にしていきたいと考えているか。

田代氏:まずはビットコイン保有高で国内No.1を目標にしたい。ただし、メタプラネットさんが今、1万6000BTC強を保有されているなかで、そこを目指しても追いつかないだろう。

もっと目線を高くしていく。世界でみると、ストラテジーが60万BTC以上を保有しており、それ以上を狙っていかないと、本当の意味での我々の成長はないと思っている。まだ個人的な考えだが、通過点としてまずは日本でトップに立つ、その後、世界でもトップに立つことを狙っていきたい。

そのためにはスピードが重要になる。他社よりも早く、取り組みを進めなければ、追いつくどころか、置いていかれる。

これはビットポイントでもそうだった。業界をリードする大手取引所に資金力も口座数も負けていた。勝てるところは、スピード。そして、工夫、生産性だった。常に先手を打って取り組んでいきたい。

──急ピッチでビットコイン取得を進めるには、資金調達の方法として、新株予約権の発行も活用することになるだろう。新株発行は、既存株主の利益の希薄化につながると懸念する声もあるが。

田代氏:そのご指摘はある。ただし、従来の新株発行と、我々のケースは意味が異なると考えている。従来の新株発行による資金調達は、集めた資金で何らかの事業にチャレンジする。あるいは、事業に行き詰まって資金調達をするケースもあるだろう。新株発行で株主の利益が希薄化しても、それが成果をあげたかどうかはすぐには判断が難しい。

一方、我々は100%ビットコインを購入する。集めた資金が形を変えるだけと言える。他社のケースでは、調達した資金の一部をオペレーション費用に充てることもあり、割合は小さくても、金額としてはかなり額になることがある。リミックスポイントは既存事業があるからこそ、100%ビットコインに投資できる。資金調達については、新株予約権のほかにさまざまな手段を検討している。

もちろん一定の批判があり、今後も出てくると考えているが、我々は、ビットコインの価値の上昇とともに、株主価値が大きくなる世界を思い描いている。

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